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過剰なまでの愛情表現。

その姿を見つければたとえ100m先からだって駆けつけて来る。


どこから見てもこの学園の女王様に尻に敷かれ。


そんな様子を人はこう言う。





「ヘタレ」だと。




    





「なぁ景ちゃん。今日一緒に帰らへん?」


部活後、いつも行われるこのやり取り。


「今日は寄るところがあるんだよ。ひとりで帰りやがれ」


そっけない態度この上なく跡部は忍足をつっぱねた。

そんな跡部の様子に忍足は情けない声を出す。

「え?!そんなん聞いてへんわ!ていうか俺に黙ってどこに行くんや?!俺も連れていけや!」

「お祖母様の家に用事があるんだよ!てめぇがいても邪魔だ、邪魔!とっとと帰れ!」


「景ちゃ〜ん...」



そんな二人の様子を黙って見ていた鳳宍がぽつりとつぶやく。


「...ヘタレだな」

「...そうですね」

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「なぁ侑士...侑士ってそんなに跡部のこと好きなの?」

昼休み、氷帝内のカフェテラスで岳人が忍足に訊ねた。

「はぁ〜...景ちやんがおらん昼休みはつまらんわぁ...」

が、その質問を受けた当の本人は岳人の質問など耳に入っていないようで。
部活動予算会議に出席していてこの場にいない跡部のことをただひたすら考えているようで。

岳人はキレてムーンサルトで回し蹴りしたい勢いだった。

「ん?そういや今なんか言ったか、ガックン?」

ピクッと岳人の額に青筋が走る。

「だから...侑士はそんなに跡部のことが好きなの...?」

岳人の声はすでに上ずっていた。

だが、そんな岳人の様子にも気づかず、忍足はパッと顔を上げた。

「何言うとんねん、ガックン。そんなん当たり前やんか!俺が景ちゃん好きやなくて誰が景ちゃんを好きやねん?」

そのニヤけた表情...

(キモイな...)

と岳人は思ったらしい。

「へぇ〜...例えばどこが好きなわけ?」

退屈しのぎに聞いてやるか、と思いつい口に出た言葉を岳人はすぐに後悔することになる。


「そうやなぁ...まず何と言ってもあのキレイな顔やね!あんなべっぴんさん滅多におらへんで!それにテニスやっとるとこもキレイやし...あ、でも顔だけが好きとちゃうよ?ちゃんと中身も好きやで〜!あいつ普段は俺様な性格やけどな、意外とカワエエとこあんねんで!でもそんなんもったいなくてガックンには教えられんわ〜...」

「あ...あの...侑士...もう...」

岳人が忍足にストップをかけるが、まったく聞く耳を持たない。

それどころか、更に続きを喋り出した。

「あとは泣きボクロやね!あれは景ちゃんのチャームポイントやからな〜。でも世界に泣きボクロ持つ奴はゴマンとおるけど、あんな似合う人間は景ちゃんくらいやで。ガックン知っとるか?泣きボクロがある人間は泣き虫が多いんやで〜?景ちゃんも普段はあんな性格やけど...意外と泣き虫なんやで?この前もテレビであったフランダースの犬見とったらボロ泣きしてな〜。かわえかったでぇ。それとその後ベッドの中で...」


「俺がベッドの中で何だって...?」


忍足のすぐ後ろから聞きなれた声。

岳人は(遅かったか...)と両手で顔を覆った。

忍足の背中には冷や汗が流れていた。


「あ...あの...景ちゃん...?」


苦笑いでなんとかその場をごまかそうとする忍足。
その秀麗な顔に青筋を立て、忍足を睨みつける跡部。

岳人はいつの間にかいなくなっていた。


「忍足...」

「はい...」


しばらく沈黙が続いた。しかしそれは正に嵐の前の静けさ。



忍足はその後これでもかというくらいに跡部に怒鳴られ、けなされた。しかも昼休みの混雑しているカフェテラスの中で...


「ごめん、景ちゃん許して〜!」


「ぜってぇ許さねぇ!もう貴様の家には泊まりに行かねぇからな!!」


「そんなん堪忍や景ちゃ〜ん!!」




そしてやはりその場にいた鳳宍、そして樺地はこうつぶやいた。

「やっぱりヘタレだな...」

「そうですね...」

「ウス...」





過剰な愛情表現。

どこから見ても尻に敷かれてる俺。

人は俺を「ヘタレ」と呼ぶ。


でもな...俺は景ちゃんが好きなだけやねん。

それにな、景ちゃんもああ見えて二人っきりの時はこんな俺に甘えてくるんやで?

ほんまにカワエエ俺だけのお姫様。






『ヘタレ』...

人がそうなってしまうのは、かっこ悪くなるくらいその人を愛してる証拠。

そんなになるまで愛してしまう人に出会えるなら...

ヘタレも悪ないと思わんか?


END
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(あとがき)
ユキ様からいただいた21000ヒットのリク、「侑士がヘタレで跡部様LOVE」な忍跡小説です。
まず、言い訳させてください。私、「ヘタレ」の詳しい意味がよく分からなかったんですよ...とにかくいろんな人に「ヘタレって何?」と聞きまくりました。そして情報収集した結果、ヘタレとは「情けない」という意味だということが判明。
でも...なんか微妙な小説ですね...
ユキ様すみません!せっかくリクしていただいたのに、こんなよく分からない駄文しか書けなくて...もっと精進します!
こんなもんでよかったらどうぞもらってやって下さい...!

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